重い病を抱えた少年翔(神木隆之介)は、母が育った古い屋敷で手術までの1週間を過ごすことになる。
そこで”借りぐらし”の小人であるアリエッティ(志田未来)を目撃した翔は、なんとか姿を現してほしいと願う。
一方、翔に目撃されたことで、初めての”借り”を成功させることができなかったアリエッティは、失望と憤りを抑えることができない。
”借りぐらし”は、人間に目撃されたら引っ越さなければならないのだ。
この家での暮らしを惜しみながらも、両親は引っ越しの準備を進めてゆく。
自責の念に駆られたアリエッティは、ついに翔に直談判に及ぶのだが・・・
***
「借りぐらしの小人が借りて行ったんだよ」
子供の頃、そこに置いたはずの物がふと見るとなくなっている、ということがあると、母はよく私に言った。
ボールペンのキャップや、菓子箱にかかってたリボンを、小人たちが何に使っているのか、子供心に想像して楽しかったのを覚えている。
まあ、たいがいは机の下や棚の隙間に落っことしてたりして、借りぐらしのみなさんには、とんだ濡れ衣だったのだと思うのだけれど(笑)
頼りがいのあるアリエッティのお父さん、ポッド(三浦友和)が素敵だった!
”借り”活動中のワイルドなアクションに、シビれました。
生活能力があり、温和で知的、そして厳しいところは厳しい、という父親像は、昨今の映画には珍しいのでは。
その反面、お母さんのホミリー(大竹しのぶ)がちょっと頼りなかったかな。夫婦としてはバランスがとれてるのかもしれないが。
少しくらいお母さんの見せ場があってもよかったのに、とちと気の毒に思った。
会話の中にしか登場しない翔の母親といい、ジブリ作品にしては異例ともいえる”強い母”の不在が、意外性を感じさせた。
繊細なディテールに目を奪われているとついつい忘れがちだが、物語そのものはけっこうビター。
例えそれが善意から為されたことだとしても、身勝手な行動から他者を傷つけてしまう人間のどうしようもなさは、(どことはいわないが

)ある種の自然保護活動のちぐはぐさにも通じる気がする。
そんなことを考えてしまったせいか、観ている間、若干の居心地の悪さを感じてしまった。
とはいえ、精緻なタッチの画面と、小人の視点を疑似体験できる世界観の素晴らしさは、天下逸品。
すこし切なくて、とても美しい映画である。