2007年09月06日

『めがね』ほぼ日刊イトイ新聞特別試写会/イイノホール

megane.jpg

春まだ浅き、ある晴れた日。南の島の空港に、小さな飛行機が到着する。
主人公のタエコ(小林聡美)は、手書きの地図をたよりに、大きなスーツケースを引きずって、ハマダに辿り着く。
道に迷わずに来たタエコに、宿の主人ユウジ(光石研)は言う。「才能ありますよ。ここにいる才能」

翌朝、タエコは謎の女性サクラ(もたいまさこ)に起こされる。
朝食の席で、観光スポットを尋ねるタエコに、怪訝な表情を示すユウジとサクラ。
「観光するところなんてありませんよ。たそがれないのに、一体何をしにここに来たんですか」と問い返され、タエコは面食らう。

タエコにとって、ハマダに集う人々は不可解だ。
ハルナ(市川実日子)は宿泊客でもないのに、宿でごはんを食べているし、サクラは浜でかき氷を振る舞っている。
毎朝集合しては、メルシー体操なる不思議な運動をしているし・・・
始めはなじめなかったタエコだったが、徐々にたそがれることを覚えてゆく。

ハマダに、タエコを「先生」と呼ぶ青年ヨモギ(加瀬亮)がやってくる。
あっというまに、ハマダの空気に溶け込んでしまうヨモギ。

ひねもすゆったりと流れる時間。
しかし、春の終わりはすぐそこまで近付いていた――

***


大好きな『かもめ食堂』の荻上直子監督最新作。
ほぼ日の試写会が運良く当たったので、台風の中、傘を折りながらも(笑)なんとか無事に会場に辿り着くことが出来た。
あいにくの天候ながらけっこう盛況。
みんなこの映画を楽しみにしてたんだなぁ。

物語は、あるかなしかの起伏で、展開という展開もなく進行するのだが、えらく心地がよい。
数々の謎もほとんど説明がなく、想像を膨らませる余地がたっぷり。
外の天気も忘れて、島の空気に浸った。
ロケ地である与論島の風が、スクリーンから吹いて来るみたいだった。
ゆったりなんでけど、退屈してるひまはない、という不思議な作品。
実際、吹き出しちゃうような面白いショットが随所にあるし。

最初は「私は結構です」と周囲を拒絶する雰囲気のタエコが、徐々に変化していく描き方がうまい。
殻を破って周囲と触れ合う方向に行くんだけれども、じゃあみんな仲良くしましょうって話かというとそうではなくて、ちゃんと孤独も尊重されるという、その距離感が絶妙なんだな。

ハルナがタエコに焼き餅をやくところに説得力がある、と言うか、わかるなぁ、という気持ちになるのは、サクラの存在感の大きさがものをいう部分が多いと思う。

ハマダのごはんは、どれもおいしそうだったなぁ。
奇を衒わないすごくシンプルなもので、これさえあればなにもいらない、というような料理だった。
そうそう、朝食のシーンで、もたいさんが左利きなのを発見!
なんだか嬉しかった。

ユウジの相棒コウジが、いい味だしていた。
コウジが端っこの方にちょこっといるのといないのとでは、だいぶ違う感じの画面になっていただろう。

マリン・パレスのシーンはおかしかったなぁ。
行き過ぎたロハス信奉主義に対するアンチテーゼ、という見方はうがちすぎかしら。

ハルナが「死んだらどうなる」と訊いて、サクラが答えるシーンがとても印象に残った。
「一度死んだら、二度は死なない」だってさ。
そうか。そうだよねー

登場人物で職業がはっきりしてるのは、ユウジとハルナだけ。
あとの人は、何をしてるのかわからない。
サクラは謎すぎて皆目見当がつかないが、タエコについてちょっと推測してみたい。
1.タエコは携帯電話の繋がらないところに来たかった。
2.タエコはヨモギに「先生」と呼ばれている。→学者か大学教授か。まさか政治家ってことはないだろう。
3.タエコがサクラに、地球なんてなくなっちゃえばいいと思ってました、という台詞があった。→地球に関する仕事?環境問題の専門家とか。

以上から導き出された仮説はこちら。
タエコは地球温暖化対策に関係する仕事をしている研究者。ひたすら真面目に生きてきたが、希望が見えない研究や、会議や公演に忙殺される生活に嫌気がさして、島にやってきた。
当初の堅い感じも、その疲れによるもの。
ってのは、どうでしょう?
的はずれかなぁ。

噛みしめるほどに味のある、スルメみたいな作品。
珍しいキノコ舞踊団による振り付けのメルシー体操は、ぜひ覚えたい!

タグ:映画 邦画
posted by ささみ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(24) | 映画(ま行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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