2006年12月02日

『失われた町』三崎亜記/集英社


失われた町

失われた町

  • 作者: 三崎 亜記
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本




30年に一度、町は失われる。
いつから始まったのか、原因は何なのか、そしてこの現象に終わりはあるのか。
人々は「町」の意識が伸ばす触手をかいくぐり、「消滅」の連鎖を食い止めることができるのか――

***


デビュー作『となり町戦争』以来の長編第二弾。
多数の登場人物を、ひとりひとり丁寧に描いた群像劇。
人物描写には文句はないが、著者特有の乾いたユーモアが今作には感じられなかったのがちょっと残念。
あと設定面で言うと、町の「消滅」、「分離者」、「居留地」という複数の要素を盛り込んであるところに、やや詰め込み過ぎの印象を受けた。
「消滅」に関するディテールだけで、作品世界の厚みを出すのに十分ではなかったか。
「分離者」とか「居留地」については、また別の機会に他の作品でじっくり読ませて欲しかった。
きっと面白いものになると思うのだが。
なんか勿体ない気がするのは、私が貧乏性だからだろうか。
ああなるほど、という思いはするが、必ずしも必要な要素かといえば、そうでもないんじゃ?と言う微妙な感じなんだなぁ。

序盤がちょっと取っつきにくかったが、そこを乗り越えて世界観を受け入れた後は、スイスイと読み進められた。
装幀も凝っていてステキだ。
タグ:書評
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2006年10月01日

『名もなき毒』宮部みゆき/幻冬舎


名もなき毒 (カッパ・ノベルス)

名もなき毒 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 宮部みゆき
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/05/21
  • メディア: 新書




「あおぞら」編集部で問題を起こしたアシスタントの身上調査のために、私立探偵・北見の元を訪れた杉村。
そこで出会ったのは、祖父を毒殺された女子高生・古屋美知香だった。

***


底知れぬ悪意に圧倒されながらも、それでも人に関わらずにはいられない、お人好しの編集者・杉村さんのシリーズ第二弾。
『誰か』から(作中で)一年。今度の事件は、連続無差別毒殺事件だ。
青酸カリ、土壌汚染、そして人の「毒」。
重いテーマに読み疲れた頃合いを見計らったような絶妙のタイミングで、ほのぼのとした杉村家のエピソードが挟まれ、ほっとできるのが、このシリーズの持ち味。だが今回は・・・(あとは読んでのお楽しみ。)

犯人たちを凶行に駆り立てた「怒り」を、私には容認することはできない。
しかし、自分の中に人を妬み嫉む気持ちがあることもまた、否定は出来ないのは事実だ。
彼らの姿が、自分の姿に重なるような気さえしてしまうから。
彼らの言葉が、もしかしたら私が発していたかも知れない、あるいはこれから口にしてしまうかも知れない言葉だと思うから。

勧善懲悪の読んでスカッとするタイプの話では決してないけれど、一人一人の人物がしっかりと書き込まれた物語は読み応え充分。
最後まで、じっくり読んで欲しい作品だ。
タグ:書評
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2006年07月18日

『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん/文藝春秋


まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01/09
  • メディア: 文庫




まほろ市で便利屋を営む多田の元に、高校時代の同級生、行天が転がり込んできた。
持ち込まれる様々な依頼を、時には足を引っ張られながら、時には助けられながら、一緒にこなしてゆく二人。
ちょっとお節介な便利屋と、奇人助手の織りなす、連作短編集。

***


私は、便利屋とか探偵の出てくる話が好きだ。
かといって、あまりハードボイルドだともたれる。
ので、この作品くらいの軽さがちょうど良い。
軽いといっても、物語の底辺には、非常に重大なテーマが流れているのだが、それが前面にぐいぐい押し出てきておらず、それでも適度な苦みを滲ませているところがまた良し。

なんだかんだいって人の良い多田と、破天荒な行天のコンビは絶品。
明るい娼婦ルル、チンケな売人シンちゃん、まほろ市裏社会の若きエース星など、個性ある登場人物が生き生きと描かれている。
続編出ると良いなぁ。
タグ:書評
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『白いへび眠る島』三浦しをん/角川文庫


白いへび眠る島

白いへび眠る島

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/05/25
  • メディア: 文庫




悟史の帰省した拝島は、十三年振りの大祭の準備に沸き立っていた。
そんな賑わいの中、不吉な噂が島に流れる。
大祭の夜。悟史は「持念兄弟」の光市、神社の次男荒太、その友人犬丸らと、島の危機に挑むことになる。

***


単行本『白蛇島』を改題。文庫化にあたって、書き下ろし掌編「出発の夜」が加えられている。

ファンタジーというよりは、ライトな伝奇ものといったかんじ。
高校卒業後の将来に揺れる悟史の、故郷や家族、なにより幼馴染みの光市に対する複雑な思いが細やかに描かれていて、青春小説としても読める。
「持念兄弟」というシステムが面白い。
魅力的なキャラクターと、閉鎖的な島という設定を生かしたストーリー展開が、見事。
タグ:書評
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2005年12月06日

『バスジャック』三崎亜記/集英社


バスジャック (集英社文庫)

バスジャック (集英社文庫)

  • 作者: 三崎 亜記
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 文庫




長さも、テイストも様々な七編が納められた、短編集。

***


「二階扉をつけてください」
初っ端にこの作品を持ってくるとは・・・恐るべし。
オチが怖い。

「しあわせな光」
きれいにまとまっている。秀作。

「二人の記憶」
ハッピーエンドなのかどうなのか、感想が分かれそうな感じ。
私はホラーだと思った。

「バスジャック」
結構好き。『となり町戦争』の作者らしい作品といえる。

「雨降る夜に」
一番気に入った。よくよく考えると不気味だけど、幸せならいいんじゃないかと・・・

「動物園」
超能力モノ?それほど面白くはなかったけど、ラストシーンがよい。

「送りの夏」
人間なのか、人形なのか、最後まで分からないところがミソなのかも知れないが、どっちつかずな印象を受けた。
タグ:書評
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2005年11月28日

『となり町戦争』三崎亜記/集英社


となり町戦争 (集英社文庫)

となり町戦争 (集英社文庫)

  • 作者: 三崎 亜記
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫




ある日広報の片隅に載っていた【となり町との戦争のお知らせ】
僕は、「戦時特別偵察業務従事者」として、一見何の変わりもない町の様子に戸惑いながら、徐々に日常に入り込んでくる「戦争」に関わることになる。

***


この物語の中の戦争には、死体も、銃も具体的には描かれない。
文字と数字で表される戦死者だけが、段々と増えてゆく。
一向に現れてこない「戦争のリアル」は、私自身が感じ取れない「遠い国の戦争」によく似ている。

主任さんが、とぉっても怖い・・・あと、合理性に徹した町のお役人さんたちも。

切ない恋愛モノとしての一面もあり、奇妙にさっぱりとした読後感が印象的な作品だった。
タグ:書評
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2005年08月14日

『孤宿の人』上/下 宮部みゆき/新人物往来社


孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)

孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2008/05/22
  • メディア: 新書




孤宿の人 (下) (新人物ノベルス)

孤宿の人 (下) (新人物ノベルス)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2008/05/22
  • メディア: 新書




十歳の少女ほうの運命は、その生誕の瞬間から過酷であった。
生まれてすぐに母を失い、周囲に疎まれ、付けられた名前の“ほう”は「阿呆のほう」。
愛を知らず、虐げられて育ったほうは、父方の事情から江戸を出され、讃岐国は丸海藩に流れ着いた。
藩医である井上家に引き取られ、初めて人らしい扱いを受けるほう。
しかしここでもまた、天は少女に安住の地を与えることを由としなかった・・・
幕府の勘定奉行という要職にありながら、罪を犯して丸海藩に流刑に処せられた“加賀様”の存在が、平和な丸海藩に思いも寄らぬ悲劇をもたらす。
ほうもまた、運命の渦に巻き込まれてゆくのだった。

***


“鬼”によって引き起こされた凄惨な殺人を起点として、貧しくとも穏やかだった人々の生活が崩壊してゆく様を、圧倒的な筆力で描き出す時代長編。
ほうの無垢な目から見た視点と、宇佐による政治的事情を絡めた視点。
このふたつによって、物語は立体的に紡がれてゆく。

人は私欲のため、あるいは大義のために、何を犠牲にしどう変わってゆくのか。
迷信によって人々が惑い、真理によって人が苦しむ様が、激しい稲光の下に描かれる。

最後に主人公ほうが手にした、“贈り物”に涙が止まらなかった。
読み始めたら、徹夜覚悟!
タグ:書評
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2005年05月27日

『むかしのはなし』三浦しをん/幻冬舎


むかしのはなし (幻冬舎文庫)

むかしのはなし (幻冬舎文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 文庫




隕石の激突による滅亡を前にした日本を舞台に、「かぐや姫」や「花咲か爺」などの昔話をモチーフにした、ややSFな中短編集。

***


各話が少しずつリンクしていて、物語の重要な要素になっていることもあれば、ともすれば見逃してしまいそうな些細なことだったりもして、にやり、とさせられる。
一番好きな話は「桃太郎」に題材をとった、少し長めな「懐かしき川べりの町の物語せよ」だ。
生クリームと黄桃を挟んだフルーツサンドが好きで、喧嘩が強くて、ちょっと頭の悪い<モモちゃん>がいい味出してる。
主人公の<僕>と交わす、
「子どもができたらどうするんだよ」
「かわいがる」

という会話や、終盤の屋上のシーンなどが、切なくて愛おしい。
タグ:書評
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2002年03月23日

『あかんべえ』宮部みゆき/PHP


あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)

あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫




あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)

あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫




お得意の江戸モノ最新長編作品は、謎解きでありながらお化けの話でもある。
ちょっと読んでまた明日読もう!っと思ってページを開いたが最後、一気に読んでしまった。
陰惨な中にも、胸を突くような優しさと哀しさがあって素晴らしい!
タグ:書評
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2000年08月15日

『ぼんくら』宮部みゆき/講談社


ぼんくら〈上〉 (講談社文庫)

ぼんくら〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 文庫




ぼんくら〈下〉 (講談社文庫)

ぼんくら〈下〉 (講談社文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 文庫




このところやけに宮部みゆきづいている・・・夜中の十二時過ぎに読み始める厚さ(513ページ)じゃないよなぁ、とは思いつつも、「ちょっとだけ」と手に取ったのが運の尽き。
一気に読んでしまった。気が付いたら三時過ぎてるし・・・
本所深川の同心・井筒平四郎を主人公にした長編だ。
鉄瓶長屋で起こる奇妙な事件の数々が、実は・・・という話。
巧みに織り込まれた風物が読む物を江戸の町に誘ってくれる。
また、主人公がちょっと異色だ。
いままでの作品では、「見え過ぎる」人を主人公に据えたもの(とくにミステリーでは)が多かった。
今作品では、「見え過ぎる」人の役回りは、主人公の甥に割り振られている。
主人公は甥というフィルターを通して、事件のあらましを探っていくことになるのである。
いつものことだが、「ああ、こういう人って現実にもいるよなぁ」と悲しくなってしまうくらい人物描写が巧い。
最後に救いがある(ような気がする)から読んでいられるが、これで徹底掉尾ネガティブな作品を書かれたら凹むだろう。
作中にちらっと「回向院の茂七親分」(『初ものがたり』の主人公)の消息が書かれていた。
まだ大親分はお元気なんだ〜。と嬉しくなった。
タグ:書評
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2000年08月07日

『あやし〜怪〜』宮部みゆき/角川書店


あやし (角川ホラー文庫)

あやし (角川ホラー文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 文庫




怖くて不思議な話がいっぱい詰まった短編集。
鬼の話が結構入っている。
「安達家の鬼」という一編が切なくて好きだ。
他に気に入ったのは「女の首」妖精伝説の日本版のよう。
もっとも、全編を通して感じられるのは、「一番怖いのは人間」ということ。
使い古された言い回しだが、読後のゾクッとした感触を表すのはこの言葉しかない。
どこが秋じゃ!と、旧暦に八つ当たりしたくなるような暑い日には怪談を読もう!
タグ:書評
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