2009年06月03日

『重力ピエロ』

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ある春の日、奥野泉水(加瀬亮)は二歳違いの弟である春(岡田将生)に、頼まれ事をされる。
春の高校まで、ジョーダン・バット――父が買ってきたそのバットには、なぜかマイケル・ジョーダン(?)のサインが入っている――を持ってきて欲しいというものだった。
バットを何に使うのかと問う泉水に春は、これからクラスのいけ好かない女子を集団で襲おうとしている奴らをやっつけに行くのだ、と答える。
呆気にとられる泉水の目の前で、高校生たちが次々と倒されてゆく。
お礼を述べるために近寄ってきた女生徒にも、なぜか一撃を加える春を、泉水は呆然と見ているしかできないのだった。

それから七年後。
大学院で遺伝子の研究をする泉水と、落書き消しの仕事をする春は、養蜂家である父、正志(小日向文世)と食卓を囲んでいた。
その日は、自動車事故で亡くなった母、梨江子(鈴木京香)の命日だったのだ。

数日後、春から呼び出しを受けた泉水は、このところ仙台で発生している連続放火事件と、自分が消している落書き(グラフィティアート)とは関係があるのではないかと告げられる。
放火されるかもしれない場所を見張りに行こうと春に誘われ、乗り気でないながらも深夜の街に出かける泉水。
しかし、またしても落書きの近くの場所で火の手が上がる。

癌を告知された父の心配や、落書きと放火の謎を解く暗号に頭を悩ませる泉水に、友人からある男の消息が伝えられる。
それは二十四年前に仙台で起きたある事件の犯人、葛城(渡部篤郎)がこの街に戻ってきているというもので・・・

過去の事件と、現在進行している放火事件との関連は?
そして、不審な行動をしている春の目的とは?

***


伊坂幸太郎の原作重力ピエロ (新潮文庫)の映画化。
今作は、近年次々と映像化されている伊坂作品の中でも、最も深刻なテーマを扱ったものといえる。
それだけに、どういった表現を用いるのか、興味深いような、怖いような気持ちで観に行った。

不幸な出来事を乗り越え、「最強の家族」となった奥野家の絆、両親の愛情、兄弟のちょっと複雑な感情を、丁寧に描いた点に好感が持てる。
原作のユーモラスな場面も細部にこだわって取り入れられていた。
正直、テーマがテーマだけに、観ていていたたまれない心持がすることもあった。
しかし最後に、兄弟の父である正志の愛が、常識だの世間体だの何だのをぶち壊して、ぶっちぎりの勝利を収めたので、救われる思いがした。
小日向さん、本当に素敵だったなぁ。

渡部篤郎には「汚れ役オブザイヤー」を進呈したい。
最近の「悪役にも五分の魂」的な作品が主流の世の中にあって、一片の同情にも値しない最低の人間を演じた、その勇気と役者魂に乾杯!

テーマはかなり重いが、秀逸なホームドラマとして成立している。
伊坂作品の愛読者からも、一定の支持が得られるのではないだろうか。
タグ:映画 邦画
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2009年05月24日

『GOEMON』

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天下統一を目前にして織田信長(中村橋之助)が本能寺で命を落とし、信長を討った明智光秀もまた、羽柴秀吉(奥田瑛二)によって討伐される。
太閤豊臣秀吉の元、乱世は一時落ち着いたかに見えた。
しかし上辺だけの平和の下では、貧困や陰謀が渦巻き、くすぶっていた。
そこに現れたのが天下の大泥棒、石川五右衛門(江口洋介)。
大商人から金を盗み、派手にばら撒くその姿は、庶民の喝采を得ていた。
そんなある日、紀伊国屋文左衛門方に忍び込んだ五右衛門は、金銀財宝のほかに、奇妙な異国の箱を見つける。
何とはなしについでに盗み出した南蛮渡来の箱だったが、空けてみれば中身は空っぽ。
五右衛門は箱を打ち捨ててしまう。
しかし、その箱にこそ、天下を揺るがす秘密が隠されていて・・・

***


有名戦国武将やら、五右衛門、霧隠才蔵、服部半蔵といった戦国ヒーローがびょんびょん出てくる。
スクエニが作ったアクションRPGみたいな作品。
映像といい、演出といい、深みのない脚本といい、まさに戦国を舞台にしたFFという感じ。
CGも凝ってると思いきや、意外とその処理手抜きじゃね?というようなところも見受けられ、もう何を見所としたらいいのやら。

予告編を見たときからそうとうヒドイんではないかと危惧していたが、想像を軽く上回るヒドさだった・・・
『CASSHERN』よりもさらに、構成、演出ともにレベルダウンしているように思えてならない。
観もしないで批判するのはよくないなぁ、と思ったので観にいったが・・・はぁ〜

五右衛門の行為のとばっちりで母を失った少年の復讐劇が、カレーに添えられた福神漬の様にちょこっとくっついていたが、どうなのよ。
五右衛門の幼少期と重ねるなら重ねるで、もっと本筋と絡めるとかできなかったのか。
無駄なエピソードとは言わないまでも、中途半端な扱いが気になった。

正義の危うさとか、自由に生きることの代償とか、そういうことが伝えたかったのかなぁ?
でもさぁ、あの浅っ〜い人物描写では、テーマもヘッタクレもないのでは。
物語が進めば進むほど、失笑&ため息が増えてしまった。

わざわざ映画館に足を運ばずとも、地上波放送の鑑賞で十分と思われる。
タグ:映画 邦画
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2009年05月23日

『スラムドッグ$ミリオネア』

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国民的人気番組「クイズ$ミリオネア」に出演したジャマール・(デーブ・パテル)は、これまで医者や弁護士でさえ成し得なかった、番組史上最高賞金2000万ルピーの獲得まであと一歩、というところまで勝ち進む。
スラム出身で教育も受けていないお茶汲み係の青年が、なぜ、どうやって、それだけの知識を得たのか。
何かの不正な手段によって、あらかじめクイズの答えを入手したのでは?
番組MCのプレーム(アニル・カプール)の悪意ある通報により、警察に連行されたジャマールは、激しい拷問にかけられる。
そこでジャマールは、質問の正答を知るにいたった理由を説明し始めるのだが・・・

宗教がらみの抗争により母を失ったジャマールと兄サリーム(マドゥル・ミッタル)の過酷な旅。
弟を保護し導きながらも、時に奪い裏切るサリームとの葛藤。
やがておとずれた、悪事に手を染め、道を踏み外したサリームとの決別。
運命の絆で結ばれたラティカ(フリーダ・ピント)と繰り返す、出会いと別れ。
社会の最底辺で、もがき、苦しみながらも、決して希望を捨てなかった青年の、魂のドラマ。

***


遅ればせながら、観てきました。

開始早々、インドという世界最大の格差社会の姿に、打ちのめされる。
現在と過去とを行き来しながら、悲惨という言葉ではとても言い表せないジャマールの過酷な半生が、時に目を覆いたくなるほどの残酷な描写も交えつつ描かれてゆく。
特に、子供に物乞いをさせる親方のママンが、一見優しげな風貌だけに余計に怖い。
そりゃあ、サリーム兄ちゃんもグレるわな。
グレて、盗んで騙して殺して、やくざになっちゃうのも、むべなるかな。
しかしそんなサリームにも隠された一面が・・・夜、ひとりで額づいて祈る姿が哀しかった。

ラティカが若いのに、何をやってもどうせ・・・と思っちゃうのも、あの境遇じゃ、無理ないわなぁ〜

だからこそ、折れない挫けない、諦めないジャマールの、一種異様なほどの前向きさが際立つのかも知れない。

最初は悪いヤツかと思ったけど、あの警部はなかなか好人物だったな。
結構おいしい役かも。

ミリオネアMC=インド人のみのもんたのキャラが立ってた。
もう、厭らしく陰険なあのタメ、口元だけのニヤッとした笑いが、気持ち悪くも強烈な印象を残す。

濃いキャラが満載の作品だったが、やはり一番強烈だったのは、(インドの)みのもんた、だった。
あ、ちなみにMC役のアニル・カプール氏は、実際にはインドでも有数の慈善家だそうな(念のため)。

エンドロールのダンスシーンだけが、インド映画っぽくて屈託なく楽しめた。
歌と踊り満載の、ハッピーなインド映画も観てみたい。

非常に優れた作品であるが、観るには体力気力が必須。

*子供たちのその後*

今作の子役アジャルッディン・イスマイル君(ジャマール幼年期)は、インド・ムンバイにある本物のスラムの住人。
映画がヒットしたから、どこかに移り住んだ・・・のかと思いきや、相変わらずのスラム住まい、で、なおかつ当局によってそのスラムも壊されてしまったという。

別のところに住んでいたルビナちゃん(ラティカ少女期)のスラムも、鉄道警察によって撤去されてしまった。

まあ、人が住んでるといっても、不法占拠だから、警察が悪いってわけでもないのだけれど・・・
強いて言えば、スラムに住むしかない人々を生み出す社会システムの問題。

映画制作関係者や州政府が、アパートを提供するという話もあったが、いまだ実現されていない。

映画に出て、有名になったからといって、一息に状況が改善されるわけでもないんだなぁ・・・現実は映画より厳しい。
タグ:洋画 映画
posted by ささみ at 00:01| Comment(0) | TrackBack(8) | 映画(さ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする